遅ればせながら、先日ようやく任天堂スイッチをゲットしてゼルダとマリオとイカちゃんを買いました。
スプラトゥーン2は、前作からの噂にたがわず とてもイカしたゲームだったので、ファーストインプレッションとして記録しておきたいと思いました。
尚、スプラトゥーンはTPSですが、~風のゲーム、という意味で通りの良いFPSの方を表記しています。気になる人はFPSをTPSと読み替えてください。それでもこの記事の話は通じると思います。
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基本動作に勝利条件を融合させたデザインがすごい
FPSの基本動作は、ざっくりいうと以下の 2つです。
- 移動する
- 撃つ(付随する動作としてエイムとリロードがあります)
ここでいう勝利条件とは、ゲームをプレイする上でどんな目的が設定されているか、と言い換えてもよいかも知れませんが、FPSで主なものは以下の 2つです。
- キルする(いわゆるデスマッチ)
- 占領する(いわゆるコンクエスト)
普通のFPSでは、基本動作と勝利条件は分離していて、段階を踏む必要があります。
例えば、キルする(=敵を倒す)ためには自分の射程内まで移動して敵をエイム(=狙う)して撃つ、弾薬が尽きたらリロード(=再装填)する、占領するためには その場所まで移動して敵をキルする、その後 一定時間 その場所にとどまる、などです。
一方、スプラトゥーンは、撃つという基本動作がそのまま占領になります。これは革新的なアイデアだと思います。
撃ち出す弾丸をインクにしたことで、占領した陣地が一目瞭然になる視覚的なデザインも秀逸です。
そして、移動とリロードも融合していて、占領した陣地を移動するとリロードになります。これらに加えて、エイム不要のブキを用意することで、移動して撃つという基本動作だけでゲームが成立するようデザインされています。
融合であって切り捨てではないところがすごい
革新的なアイデアとはいえ、移動しながらインクを飛ばして地面や壁を塗りあうだけでは楽しいゲームにはなりません。
FPSにおいて、移動して撃つ、という基本動作を見た目以上に複雑にするのはエイムとリロードの存在です。
特に目に見えやすいエイムは、プレイヤーによって はっきりと差が出ます。
上手い人のプレイでは、照準が吸い付くように敵を捉え、まるで映画のように次々と敵が倒れていく光景を見ることができます。しかし不慣れなプレイヤーの場合、動き回る敵の姿を画面の中におさめ続けることすら難しいでしょう。
この差は、99%の訓練と1%の才能によるものですが、FPSが敬遠されがちな理由の一つであることは否めません。
スプラトゥーンでは、エイム不要のブキを用意してハードルを下げつつ、エイムが必要なブキも残し、それらのバランスを取っています。これは とても難しいことですが、エイムがFPSになくてはならない要素だと理解してデザインされていることに好感しか持てません。
リロードは、実はゲーム的には奥が深い要素で、エイムが個々の戦闘の中で重要な戦術的なテクニックであることに対して、リロードは複数の戦闘にまたがる戦略的なリソース管理テクニックです。インク切れの状態では、どんなにエイムが上手くてもキルできませんし、常にインクが一杯の状態ならば戦況に貢献していないことになります。
スプラトゥーンでは、移動するだけでリロードできるものの、戦略的な意味は失われておらず、見事に融合していると思います。
複雑な動作を自然にできるようになるデザインがすごい
移動とリロードが融合しているからこそ、ただその場でインクに潜ってリロードするのではなく、リロードしながら移動するというテクニックに気付きやすいデザインになっています。
FPSはシューティングゲームに分類されるので、移動して撃つという基本動作のうち、撃つ方に目がいきがちですが、撃つこと以上に移動はとても重要です。これは専門用語でポジショニングといいます。日本語では「立ち回り」という言い方もありますが、立ち回りは戦術的な要素も含む場合があるので、少しニュアンスが違います。
ポジショニングは攻撃にも防御にも重要です。上手いプレイヤーは、敵、味方、地形の状況を常に把握しながら、危険が最小で効果が最大の行動ができるよう、リアルタイムに行動計画を更新しながらポジショニングしています。そこに敵がいたから撃つのではなく、そこに敵がいると知っているからキルします。敵からの攻撃を受けてもキルされないのは、攻撃される危険を予測していて、退路を確保しながら移動しているからです。
最高のプレイヤーと称されるのは、エイムの達人ではなくポジショニングの達人であることが多いと私は思います。
また、どうして勝てないのか わからないとき、ポジショニングの意識が欠けていることが多いのではとも思います。
良いポジショニングのためには、広い視野が必要です。
スプラトゥーンでは、敵を倒すことに消極的なプレイヤーでさえ、色を塗る場所を求めて周囲を見回すことになります。そのとき、味方をつけ狙うことに夢中になっている敵を発見したとしたらどうでしょう。背後や遮蔽物の陰など、死角から近付き、ひきころしてみたら楽しいに違いありません。では死角から近付くにはどうしたらよいか。敵と味方の移動している方向や地形を考えて、ひきころせる位置へ移動(ポジショニング)することになります。これは非常に複雑で高度なテクニックです。ポジショニングさえ上手くやれば、エイム不問で敵をキルすることができます。
ゲームに不慣れなプレイヤーは視野が狭く、目の前の状況しか見えないことが多いのですが、スプラトゥーンでは「常に周囲を見回しましょう」と誰かに指図されるまでもなく、自然にポジショニングの重要性に気付けるデザインになっています。
シンプルに見えてステルス要素もあるのがすごい
多くのゲームにおいて、ステルスは(褒め言葉として)汚い要素の一つです。見えない状態からいきなり現れて倒されるなんて、これほど口惜しいことはありません。本当に汚い手口です。
スプラトゥーンでは、基本動作にステルスが融合しています。インクに潜ってじっとしていることで、敵にはまったく見えません。しかし潜れるインクは味方の色のみなので、インクを撃つという基本動作にアンチステルスも融合しています。これほどスマートなデザインのステルスを、私は見たことがありません。
加えて、スプラトゥーンの戦場は比較的狭くデザインされているためゲームの展開が早く、ステルスできる場所も視覚的に明確なので、ステルスを活用できる場面は かなり限定されます。また、すべてのプレイヤーが基本動作として可能なためステルスそのものへのヘイトがたまりにくく、悪目立ちせずマイルドになっていると感じます。
いきなり実戦に放り込む崖ライオン(崖イカ?)がすごい
ゲームを開始すると、移動して撃つという基本動作のチュートリアルのあと、いきなり他のプレイヤーとの対戦プレイに誘導されます。ニンテンドーアカウントを作成して連携しなければいけない、というゲーム外の障壁はあるものの、それをやらないとゲームが進みません。
しかし、これまで書いてきたようなシンプルかつ洗練されたゲームデザインにおいては、これが最良の道であることがわかります。
崖から突き落とされて戦場に転げ落ち、右も左もわからないイカちゃんでも、移動して撃つことはできます。スプラトゥーンは、移動して撃つだけでゲームが成立するようにデザインされています。そして、上手くなるためのコツを自然に気付けるようデザインされています。
ひとたび対戦プレイに踏み出すハードルを越えてしまえば、あとは 8人のプレイヤーによる、無限の展開を楽しめるゲームがそこにあります。
おわりに
スプラトゥーン2の、ごくごく基本的なゲームデザインについて書きました。
似たようなことをすでに誰かが書いていたらやめようと思ったのですが、マニアック過ぎるのか あまり見当たりませんでした。
いくつかゲームデザインに言及した記事があったのでリンクしておきます。
11月24日には大規模アップデートもあるようですね。楽しみです。
それでは今晩も。塗りたくぅ~る テンタクル!

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